プラセボと代替医療
みなさんはプラセボ効果という言葉をご存知だと思いますが、最近では民間療法(代替医療)における医療効果が話題となっています。その効果が治療によるものなのか、それともプラセボ効果(思い込み)によるものなのか、その判断はとても難しいのですが、少しまとめてみたいと思います。
1800年代にイギリスの医師であるジョン・ヘイガースが、その当時ロンドン郊外の医療リゾートであるバースで大流行していたとあるインチキ治療を暴いたことが、おそらくプラセボという考えの起源になるでしょう。
そのインチキ療法というのはトラクターという2本の特殊な合金でできた金属棒で痛む部分を数分こするのだそうです。この治療法は1796年にイライシャ・パーキンスがアメリカで初めて医療分野で特許を取り、ジョージ・ワシントンなどの著名人も支持していたそうです。その息子ベンジャミン・パーキンスがロンドンに移住したためヨーロッパにも広がり、この親子はボロ儲けしたそうです。そういえば数年前に日本でも、金の棒でこすると癌が消えるなんてのもありましたよね…
この治療法は痛みをとる以外にリウマチ、痛風、麻痺、筋力低下にも効果があるとされていましたが、ヘイガースはトラクターを他の金属やスレート材や動物の骨で偽物を作り、患者に内緒でそれらを使用しても本物のトラクターを使った場合と同じようになることを実証しました。
治っていると想像するだけで病気に対して多大な影響が及ぶことをヘイガースは発見し、プラセボ効果について影響しやすい要素をまとめました。
・医師の評判が高いこと
・治療費が高いこと
・治療法が目新しいこと
これらが満たさせていると治療効果が高いそうです。
では、最も身近にある代替医療である鍼治療はどうでしょうか?東洋医学は2000年もの歴史がありますが技術は経験で語られることが多く、科学的根拠も乏しいのも事実です。しかしながら、WHOは2003年には冠動脈疾患をはじめ91の症状について鍼治療に治療効果があることを認め、はっきりと承認を与えています。
ただこれには問題があって、ずさんな臨床試験のやり方や、そのほとんどが中国でしか行われていなかったこと、WHO鍼調査委員会の全員が肯定派だったため、結論が歪められた可能性があるという結論になりました。
医療における世界的な評価組織であるコクラン共同計画によると、鍼治療は
・鍼の有効性は臨床試験から得られた科学的根拠によって支持されていない。
・臨床試験がずさんであり、鍼の有効性について確かなことは何も言えない。
・研究方法がずさんで件数も少ないため、系統的レビューを行うこともできない。
という結論になっているようです。さらに鍼はある種の痛みと吐き気だけに有効で、その効果自体もプラセボであることも示唆されるようになってしまいました。
そもそも気や経絡が実在することを示す科学的根拠も無いため、伝統的な鍼の基本的思想は大きな難点をかかえているのですが…。そうなると自然治癒力も否定されちゃいそうですけどね、科学的根拠をとりづらいので。
僕個人としては、歯科治療として科学的根拠が無いことをするのは嫌ですけど、補助的な方法としては鍼もアリだと思います。気や波動なんかも根拠はないですが、実際その考え方にロマンを感じていますし、正直治ってしまえば何でもありかな~♪今見えないことにこそ未来があるし、本当の意味で自分を治せるのは自分の意志しだいです。従来の治療との組み合わせで可能性は無限に広がって行くんだと思っています。