不正咬合の原因
少し子供の予防歯科シリーズは一旦中断して、違う話をしようと思います。
矯正歯科医とは、歯並びの悪い人が、悩み、キレイになりたいと一念発起し、あわよくばもっと食事をよく噛めるようになりたいと考え、大金を握って歯科医院の門を叩くことにより生計を立てている人たちです。
咀嚼の効率がどうかとか、どこまで審美的に治すかといった意識は一人一人違いますが、矯正をやりたいと考えるヒトは歯科におけるモチベーションの高い人だと言えます。従ってモチベーションの高いヒトが増えるほど矯正歯科は潤うということになります。
僕が診療していて思うことは、世の中(ここ宮崎台付近?)には歯並びがいい人はわずかしかいないということです。当院では初診の患者様は全員、口腔内を写真撮影させていただき、いろんな角度から問題点を抽出したり、説明に使用したりします。しかしほとんどの場合、上顎と下顎の骨格のアンバランスや歯列不正による噛み合わせの問題が生じています。ですから、虫歯がどんどん少なくなったとしても、歯並びの悪い人はいなくならないため矯正歯科は安泰なんだろうな…と考えています。
しかし、僕は予防歯科を推進していますので、歯列不正の人間が生まれないようにするためにはどうしたらいいか、何を伝えるべきか、なんてことを真剣に考えています。もちろん矯正治療もやりますけどね♪
余談はさておき、、そこで重要なのは不正咬合の原因を知ることなのです。何事も原因を知らなければ予防もナニもあったものではないからです。
矯正歯科界では過去100年にわたり、不正咬合が遺伝によるものなのか、はたまた環境によるものなのか議論が繰り返されてきました。そして、今もその原因は解明されていません。本当に解明されてないのか、公にできないだけなのかよくわかりませんが、ここでは僕の考えを述べてみます。
まず遺伝要因説ですが、父親の大きな歯と母親の小さな顎を持って生まれた子供は不正咬合になると確かに考えられます。しかし、人間には生命の進化の途上で発達させた、不調和な遺伝発生を予防する強力な淘汰能力が備わっています。ですので、必ず調和した形で骨や歯は発生するようにできているのです。ヒトのDNAがそこまでデタラメとも考えられませんし。もし可能性があるとすれば、歯の先天欠如や奇形などの遺伝子の突然変異でしょうか?しかし、この不確定な要因が不正咬合のパターンを発現させているとは考えがたいですしね。
僕はやはり環境要因が不正咬合の原因であると考えています。その環境要因とは、3つ挙げられます。
1つ目は食生活の変化です。何度も説明しているので詳しい説明は省略しますが、栄養の不足と軟食化が最も大きな要因であると考えています。
2つ目は舌や唇の筋力です。特に舌が口蓋にしっかりと挙上されて収まる時に、歯列の大きさは十分に保たれます。Beggテクニックで有名なRaymond Beggは咀嚼筋の発達が良好であるほど、舌を口蓋へ持ち上げる力が強化されることを示しました。このことから、舌圧の不足は上顎の発育を遅延させると考えられます。つまり、遺伝的に理想な骨格となる予定であっても、舌の力が弱いために上顎が成長しきらずに歯の並ぶスペースも足らなくなり、歯列不正となるのです。
3つ目は、鼻の通気路の減少です。現代人はアレルギーをもつヒトが多く(そもそもの原因は栄養不足や加工食品などの異物により免疫が低下なのですが)、アトピーなどに悩む子供も増えています。すると鼻粘膜が充血し、口呼吸となり、扁桃も肥大しやすくなるため通気障害を起こし、口がポカーンと空けるようになります。結果として、口を閉じて咀嚼することも難しくなり、舌や咀嚼筋をあまり使わなくてもいいような軟食を好んだり、水で食べ物を流し込んだりするようになり、1つ目や2つ目の要因とともに互いに増幅し合ってしまうのです。
従って、子供の不正咬合はこれらの原因を把握していない親や周りの大人が作っているということなのです。もちろん、しっかり患者教育しない歯科医師にも問題があるのですが…。知ろうともしない親はもっと問題だと思うのですが。自分のエゴのために子供を不健康にしている親を見ると、とても悲しくなってしまいます。ただ、1人でも多くのヒトに予防の考えをしっかり理解していただいて、それが拡散すれば、彼らの孫の世代は歯列不正や虫歯のない世界にできるんじゃないかな〜?なんてね