咀嚼!!!
咀嚼(そしゃく)とは食べ物を噛んで飲み込みやすいように小さくする運動のことですが、現在では様々な効果が報告されています。よく噛んで食べることにより、脳の働きを活性化したり、満腹中枢を刺激して肥満の予防になったり、消化が良くなるため美容に良かったりと、とても大切な運動であることは明らかです。
最近、小児の矯正相談が増えてきたように感じます。もちろん我が子にはきれいな歯並びであって欲しいですし、親も子も美意識が向上してきているのだろうと感じます。今も昔も歯並びの悪い人はいますが、はたして遺伝的な要因のみが原因でしょうか?そして、歯列不正は予防できないのでしょうか?
現在では咀嚼と骨格の成長には緊密な関係があると考えられています。90年代にVarrelaは中世と現代のフィンランド人の頭部をレントゲン写真により比較し、頭蓋顔面骨格の成長は咀嚼負荷によって規定されると述べています。これらの研究などからヒトにおいては軟らかい現代食が顎顔面 領域の骨の成長に影響を与えている可能性が推測されると発表しています。確かに縄文人に比べ現代人の骨格はシャープになっていますので咀嚼の影響と言えます。ですから、現代では『あまり噛まない』『噛めない』『丸のみする』人が増えているのです。
では、しっかり咀嚼する習慣はいつ身に付くのでしょうか?
まず赤ちゃんは舌と口蓋(上あごの歯ぐき)を使って乳首を吸います。
離乳初期の生後5~6ヶ月でドロドロの離乳食を唇を閉じて飲み込むことを学習します。ここからが咀嚼のスタートになります。
離乳中期の生後7~8ヶ月で食べ物をモグモグと舌でつぶして食べるようになります。ここで舌と唇の協調した動きを学びます。
離乳後期9~11ヶ月で上下の歯ぐきで食べ物をつぶして食べるようになるため、下あごの動かし方を学びます。この歯ぐきで食べる時期がとても重要でものをしっかりと噛む習慣はこの時期に身に付くのです。ここで成人と同じ硬さのものを食べさせようとすると、しっかり噛めずに丸のみを習慣化させてしまいます。ですから、『歯ぐき食べ期』は顎の成長発育を考えると15~18ヶ月まで続けた方がベターでしょう。
そして摂食パターンは18~24ヶ月で臨界期を迎え、その後のパターンの改善は難しく、生涯変わらないものとなります。
しかし、大人でもしっかり意識して噛むことで習慣化させることは可能であると考えていますので諦めないことが肝心です。
そして、生まれたばかりの子供のいる親御さんは子供に『早く早く』を押し付けず、離乳食を根気づよく作って健全な成長を見守って欲しいものです。