虫歯(う蝕)とミュータンス菌
う蝕の原因菌はStreptococcus mutansやStreptococcus sobrinusというミュータンス菌であり、それらが糖質と反応して乳酸を産生し、エナメル質のハイドロキシアパタイトを脱灰することでう蝕が進行することは広く知られています。その他、Lactobacillus caseiなどの乳酸菌やActunomyces viscosusなどの放線菌もう蝕を引き起こします。
しばしばメディアにも多く取り上げられますが、子供は2歳までに細菌が定着するため、口にキスしちゃダメとか、硬いものを親が噛み砕いて子供にあげないとか、スプーンや箸を変えないといけないとか、熱いものをフーフーして冷ましてあげるのも良くないとか、もはや常識のようになっています。
問題なのは、これらがすべてデタラメなんです。
口腔常在菌の種類(細菌叢)は生涯にわたり変化します。赤ちゃんにもすでに口腔常在菌が存在しています。9割をStreptococcus mitisという細菌で他の細菌の侵入を妨げているのです。このStreptococcus mitisを生涯にわたって残すことがとても重要でミュータンス菌の割合を抑えることができます。ミュータンス菌はバイオフィルムで守られているため抗生剤では死にませんが、mitisは小児期に抗生剤を投与されると簡単に死んでしまいます。そのためミュータンス菌だらけになってしまうわけです。しかし、子供が風邪をひいて病院へ行くと、すぐに抗生剤が出てきますね?重症化するのも嫌だししょうがないかな…というところでしょうか?子供にもしっかりと免疫があるのでよほどの急性症状でない限り抗生剤は必要ありません!!子供は感受性が高く、体に備わっている常在菌のバランスが容易に崩れやすいからです。体を守るはずの細菌も容易に減少させてしまいます。
そしてもう一つの対処法は糖質をセーブすることです。
運悪く口の中がミュータンス菌だらけになってしまった場合、どんなにブラッシングをしてもバイオフィルムの周りのプラークのみが落ち、バイオフィルム自体は落ちないのでミュータンス菌は残存してしまい、う蝕予防の効果はありません。
バイオフィルム
バイオフィルムを除去するには歯科医院で機械的な清掃を行う他ありません。CMのような薬剤のうがいだけで全部洗い流されるとか、ブラッシングでなんでもかんでも綺麗になるなんてことはありえませんから。
ですので砂糖をやめて、ミュータンス菌を兵糧攻めすることによりう蝕を予防するということが最も確実な方法なのです。
ここに2つのデータがあります。
・子供において唾液中のミュータンス菌量が多いとう蝕になりやすい。
・母親のミュータンス菌量が多いとその子供はう蝕になりやすい。
これらのデータは単に個体を見ただけのものであり、環境は無視されています。つまり、『母親のミュータンス菌が増加するような環境で育てられた子供は虫歯になりやすい』ということなのです。母親が甘いものが大好きなら、どんなに子供のお菓子を制限しようとも、う蝕のリスクは高いままということですね。
結局は子供の虫歯を作るのは親なのです。メディアに洗脳された親の間違った認識を子供に押し付け、良かれと思いながら知らない間に子供の健康を害していることもしばしばあります。これを『毒親』と呼ぶそうです。皆さんも毒親にならないよう、物事を自分で判断する力を磨きましょうね。