インプラントの長期予後⑤
インプラントの長期予後を左右する要因として、全身的な問題は前回までの記事を参照して頂くとして、
今回は口腔内の要因です。
今回は、かみ合わせについてです。
俗に言う「糸切り歯」とは犬歯のことですが、上下の犬歯がしっかり機能していないと奥歯にインプラントを入れた際、過剰な力が生じてしまい、予後に影響することがあります。
実際のところ、犬歯が機能していなくても、他の小臼歯が機能していたり、マウスピースを入れたりすることでカバーできる場合も少なくありません。
しかし、歯並びが悪かったり、強い力で歯ぎしりしてしまうような人はかなり注意が必要です。
当院では、インプラント治療と合わせて、部分矯正や全顎矯正を併用させていただくことも少なくありません。
歯が抜けた状態を長く放置し、周りの歯が動いてしまった所にインプラントを入れても、決して元の状態に戻ることはありません。
重要なのは、なぜその歯が抜けてしまい、インプラントが必要になったのかを考えることだと思います。
虫歯や歯周病でダメになったのはなぜか?
なぜ過去の治療はうまく行かなかったのか?
正しく機能しているとはどういうことなのか?
残りの人生をどのような口腔内で過ごしていくか?
自分にとって、その歯や歯並びにコストをかける必要が本当にあるのか?
見た目も含めてどうなりたいか?
おそらく人それぞれにいろんな要望があるでしょう。
ですので、私達はしっかり話をさせて頂きます。
メリット・デメリットはもちろん、予後までしっかり話をさせていただきます。
インプラントは一度入れてしまうと、骨と結合してしまい、骨を削って除去しない限り動かすことはできません。
つまり、インプラントを入れてしまうと矯正ができなくなるのです。
ですので入れる前に、他の歯がこの状態でインプラントを入れても良いのかどうかよく考えていただきたいのです。
当院では歯をなるべく削らないことが体にとって最も良い治療であると考えています。
安易に削って、被せものをしてかみ合わせを治しても、今度はその歯が弱ってしまいます。
多くの方にとって矯正はハードルが高いものと映るかもしれませんが、矯正とインプラントを的確に組み合わせることで、より満足度と予知性の高い治療を行うことができるのです。
実際、矯正によって歯を残すことのできたり、残っている親知らずを使えるように動かすこともできます。
インプラントは素晴らしい治療法です。
しかし、天然歯には敵わないと思います。
しっかりと状態を見極め、しっかりと要望を聞き、明確なゴールを持つことによりよい治療が達成されます。
矯正治療やインプラント治療の持つ可能性を、より多くの人達にも知ってもらえるよう、これからも精進して参ります。