保険診療と自由診療
日本には国民皆保険制度があり、誰でも最低限度の医療は軽い負担で受診することができるようになっています。日本国民は全員が被保険者(市町村国保、国保組合、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)に加入し、一定の保険料を支払っています。しかし、当然それだけで医療費が賄われるはずがなく、地方税や国庫が財源となっています。つまり多額の税金が使われています。ということは、医師や歯科医師にとってお金をやり取りする相手は患者よりも、7割以上は国とやり取りしていることになります。つまり、医師や歯科医師の多くは国の制度に乗っかって生活していることになります。
あくまで個人的な見解なのですが、医療にはレベルが存在します。ただ消毒したり、薬を出したりするだけであれば治療はどこでも同じレベルといえるでしょう(それを治療と呼べるかどうかわかりませんが…)。しかし、10年間歯科診療に携わって感じることは、『保険診療は予後に大きなばらつきがある』ということです。歯科大学を卒業したばかりの研修医が治療しても、ものすごく腕の立つベテランのドクターが治療しても同じ料金です。つまり、保険診療自体の内容には差がないにもかかわらず、何事もなく何年も経過する人もいれば、詰め物がすぐに取れたり痛んだりすることもあるわけです。もちろん保険が悪いとかそういうことではなく、生活習慣であったり、個人のリスクファクターによるものであり、基本的にはどこでやっても同じものであって保険診療にクオリティを求めるのはナンセンスであると考えています。
『保険だから、ある程度時間がたったらやり直す』とか、『保険だからしょうがない』とか、一種の逃げ道のような感じになっているのも事実だと思います。もちろん保険であっても20年や30年もつ治療ができれば問題ないですが、口腔内は経年的に変化しますし、使用できる材質も限られているのでそのようなケースは稀であると言い切れます。ですから、保険で治療した歯が数年後に再治療を必要とすることによって、コンビニよりも増えてしまった歯科医院を経済的に支えているのです。果たしてそれが本当に健康のことを考えているといえるのでしょうか?
一方、自由診療はセラミック修復やインプラント、根の治療まで幅広く行われています。しかし単に金属が嫌だからとか、入れ歯が嫌という理由で白いものを入れるという概念はとても危険です。それは、口腔内は常に一単位で考えることがとても重要で、『詰め物がとれたから詰め直したい』と思ってもそれがなぜとれたのか、何が影響しているのかといった原因をしっかりと考察しなければならないと考えているからです。なぜその歯に力がかかりすぎているか、なぜそこが虫歯になるのか、なぜ歯石がつきやすいのか、歯並びがどのような影響を与えているか、その根本的な原因を明らかにして取り去らない限り、保険診療でも自由診療でも大差はありません。
理想的な自由診療とは、真の予知性を高める為に口腔内全体を精密な検査で把握した上で、生活習慣や習癖、食生活、健康状態までを加味してメインテナンスプログラムや栄養指導が行われる必要があると考えています。もちろん自由診療だからといって『一生もちますよ』なんて野暮なことは言いません。しかし、最低でも10年間の責任はもたなければ自由診療など意味がないと思っています。当院では、保険診療と同じように治療して材質の違いだけで高額な請求をすることはありません。良い材質であるからこそのメリットを最大限に生かし、長くよく噛める状態を維持することを、これからも追求し続けていきたいと思います。健康は望めば望むほど治療のハードルは上がりますが、しっかりとお応えすることが使命だと考えています。
当院は保険診療も自由診療も行っております。治療で悩んでいる方はぜひご相談くださいね!!