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太るワケ②

今回は、太るメカニズムを少し掘り下げてみようと思います。

肥満において、インスリンが最も重要なホルモンです。1965年にサロモン・バーソンとロザリン・ヤロウが『インスリンは主要な脂肪代謝の調節器である』ことについて説明しています。インスリンは主に2つの酵素を介してこの仕事を行います。
その一つはLPL(リポ蛋白リパーゼ)です。性ホルモンは脂肪細胞のLPLの働きを抑制しますが、インスリンはLPLを活性化します。インスリンにより活性化された脂肪細胞のLPLは血液から脂肪をたくさん取り込み細胞を太らせます。一方、筋肉にもLPLがあり、インスリンは筋肉のLPL活性を抑制します。つまり筋肉での脂肪酸の使用を減少させ、代謝を上げないようにします。そしてインスリンは血糖のみを燃やし続けるように指示を出すのです。
もう一つの酵素がHSL(ホルモン感受性リパーゼ)です。HSLはLPLとは逆に脂肪細胞から脂肪酸を血液中に放出して、それを血糖の代わりに燃やすため、脂肪量は減少し、痩せるようになります。しかし、インスリンはごくわずかな量でもHSLを抑制するため、インスリン値がわずかでも上昇すると脂肪細胞は脂肪を放出できずに脂肪が蓄積されることになるのです。
そしてインスリンは脂肪細胞にブドウ糖を送り込んで代謝を上げます。ブドウ糖代謝における副産物であるグリセリンは脂肪酸と結合して中性脂肪となりさらに多くの脂肪が貯蔵されるようになります。さらにインスリンは脂肪細胞が満杯にならないよう新しい脂肪細胞を作るように働きかけます。つまり、インスリンが行うことはすべて、溜め込む脂肪を増やし、燃やす脂肪を減らすように作用し、肥満へと導くのです。

では、脂肪を蓄積するか、燃やすかを決めているものはなんなのでしょうか?
1つはインスリンの分泌量です。人により分泌量が違うので多く分泌する人は太りやすいと言えます。過度のインスリンの分泌は脂肪細胞に脂肪を無理にでも押し込んでしまいます。
2つめはインスリン抵抗性です。インスリンを多く分泌すればするほど、細胞と組織はインスリンに対する抵抗性が強くなります。それは同じ量のブドウ糖の負荷であっても、血糖値を保つためにより多くのインスリンが必要になります。中でも筋肉細胞にはブドウ糖が蓄えられており、運動しなければ新たにブドウ糖を取り込む必要もないため簡単に抵抗性を示すようになります。その結果、脂肪細胞が太ることになります。
3つめは脂肪細胞、筋肉細胞、肝細胞がインスリンに対して違う反応を示すことです。ある組織のインスリン感受性が高ければ、その組織はより多くのブドウ糖を取り込みます。それが筋肉の場合、より多くのブドウ糖がグリコーゲンとして貯蔵され、多くが燃料として燃やされます。脂肪組織の場合はより多くの脂肪が貯蔵され、燃料の放出はより少なくなります。

ややこしいので『中年太り』という状態で説明します。まず、加齢により筋肉細胞のインスリン抵抗性が高くなります。すると感受性の高い脂肪細胞に摂取されたエネルギーがより多く分配されます。すると、筋肉や臓器の細胞が燃料として使用するエネルギーが減ります。つまり、代謝が落ちるということなのです。言い換えれば、代謝が落ちるから太るのでなく、体が太りつつあるために代謝が落ちるのです。

太ることについては遺伝的な影響もないわけではありませんが、後天的な肥満のほとんどはインスリンのコントロールができていないことによります。皆さんもお分かりでしょう。代謝を落とす原因は過剰なインスリンの分泌、つまり過剰な炭水化物(糖質)の摂取というわけなのです。
次回は、炭水化物と病気との関わりについてです。

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