牛肉を成型する?
先日、ステーキレボリューションという映画を見てから、ただでさえ肉好きなのに、さらにもっと肉を欲するようになってしまいました。僕が一度は訪れてみたいと夢見ているNYにあるピーター・ルーガー ステーキハウスも登場していますが、世界には和牛やアンガス牛以外にも魅力的な牛肉がたくさんあるんだなぁ、とステーキの奥深さに驚かされました。
そんな牛肉についてのお話ですが、当院で食事指導をする際には、なるべく自然に近いものを食べるように指導しています。
自然な状態の肉と言えばグラスフェッドビーフ(牧草のみで育った牛)です。もちろんホルモン剤、GMOの飼料や抗生剤も使用していないものが最高の牛肉だと考えています。しかし、そんな本来のあたりまえな牛肉を買おうと思うと、A5ランクの牛肉よりも値段が高くなってしまうこともあるようです。
ですので、実際には自然な牛肉を毎日食べることはできません。どうしてもスーパーやお肉屋さんの安い肉を買わざるを得ないのが現状です。地球上のほとんどの牛肉はこのような肉ですが、安定した価格で食肉を提供するには安定した生産が必要です。
畜産業者はホルモン剤で成長を早め、GMOの飼料でエサ代をカットし、抗生剤で病気にかかりにくくし、大量生産することで安価な牛肉を提供することができます。また、和牛も日本で育てるより海外で育てた方がコストも安いので、外国産和牛も多く出回っています。
しかしこれらのことは、よほどグルメな人か、筋金入りの健康オタクくらいしか問題にしないでしょう。多くの人にとって肉は硬いか柔らかいかの違いでしかなく、調理法や味付け次第でうまい・まずいを判断するのだけなのですから。しかし、今はエイジングビーフを食べられるお店も増えてきているので、肉そのものの味を気にする人も増えていることでしょう。
その反面、世の中には激安肉というものが存在します。スーパーなどでびっくりするくらい安い牛肉を皆さんも見たことはありませんか?ファミレスチェーンや弁当屋なんかでこんなに安いの?っていうような肉料理を見たことはありませんか?
ほとんどの場合、「成型肉」という合成肉を使用しています。
成型肉とは、安くて脂身の少ない肉や内臓肉を材料に、バラバラのミンチ手前の状態まで加工し、そこに上質の牛脂を足して結着剤で結合させたものです。
その製法は各社様々であり、これという特定の加工法がある訳ではありませんが、その一例を挙げると、材料として、クズ肉や脂身の少ないハギレという部位を使い、これにカゼインやレシチン、大豆タンパクと投入します。これらの成分に熱を加えることで、凝固するします。
さらに冷凍状態で肉同士を結びつけるトランスグルタミナーゼを加え、あとはプレスして圧着します。仕上げに霜降りのように見せるために脂肪を注入し、その後冷凍されて出荷されます。本来は家畜飼料として使われていたクズ肉なども、このような様々な加工が施され一枚肉に生まれ変わります。
特にサイコロステーキなんかは危険な肉ナンバーワンでしょう。
成型肉は、人のエゴが作り出した工業製品です。牛を育てるよりこんなに手間を加えてでも成型肉を作った方が業者的に利益があるということなのです。しかも大量に出回っているのが現実です。これも安い肉を少しでも高く売るための戦略なのでしょうか?目の前にある一枚のステーキが一頭ではなく、何頭もくっついたものだと考えると、それだけで面白いですが、添加物の塊なので健康には大きな影響を与えます。
せめてステーキを食べるときは、肉の塊がわかるように置いてあるお店や、激安チェーン店以外の信頼できる店を選ぶしかなさそうですね