医療サービス
世の中いろんな業界でサービスの向上が話題になっています。例えば、客に無料でドリンクを提供したり、Wi-Fiや駐車場、食事までいろんなサービスを行う店も増えてきました。無料サービスのほとんどはその商品の売上を伸ばすことや、お店に長時間滞在することで消費を促すことが目的です。
医療においてサービスとは、いかに早く痛みをとるか、早く治癒させるか、苦痛を与えないか、美しくするか、機能的に改善するか、安心感を与えるかなど、治療者の技術を求められます。
もちろんそれ以外にも清潔かどうか、アメニティーは充実しているか、雰囲気が良いか、スタッフの印象、予約のとりやすさなどのポイントも重視されます。僕が以前勤務していた歯科医院ではボスが見回りに来ては床の汚れや服装、挨拶など事細かく指導しているところもありましたし、清潔さには無関心で、歯を削る機械も患者ごとに交換せず患者の見えない場所の衛生には全く配慮していないクリニックもありました。
健康を扱う場所である以上、不衛生なんてありえないですし、スタッフの雰囲気が悪いところで治療なんて受けたくないですよね。ましてやドクターにめっちゃ怒られるところなんてゴメンですが。ただ、ドクターが優しいからと言って不勉強だったり治療法の選択肢をくれなかったり、保険診療中心なのに自由診療をゴリ押ししてくるところは早めに見切りをつけても良いかもしれませんね。
話をサービスに戻すと、診療内容がどうかなんてもちろんですが、クリニック自体が気分の良い環境であるためにはスタッフの心構えもとても重要です。いい気分で仕事をするからいい結果が得られる。これはどんな業界でも共通ですし、最近ではマインドフルネスのセミナーを行う企業も増えているようです。
医療におけるサービスの考え方はアメリカのミネソタ州ロチェスターに始まりアリゾナ州フロリダ州に展開するメイヨー・クリニックがとても参考になります。100年以上の歴史のあるメイヨー・クリニックはずっと患者中心の文化を築き、今や全米はもとより世界中から患者が訪れ患者数は年間50万人を軽く上回ります。治療技術は世界的に見ても非常に高いことは言うまでもありません。メイヨー・クリニックはスタッフはもちろんドクターも固定給制です。それは、量ではなく質に重点を置くためだそうです。
特筆すべきはスタッフ同士でメイヨーの価値観の共有を徹底することで、自由裁量権を与えられている点です。例えば、あるスタッフが、時間どおりに持ち場に戻ることと、時間を10分割いて歩けない患者のために車椅子を持ってくることの選択を迫られた場合、間違いなく患者は車椅子を持ってきてもらえるでしょう。スタッフが価値観に基づく権限を施行すれば、並外れたサービスが頻繁に提供されることになるのです。
当院は小さなクリニックなので、子供の治療を待つ家族にお茶やコーヒーをお出ししたり、暑い日に冷たいおしぼりをお出ししたり、母親が治療中の泣いている赤ちゃんをあやしたり、気がついたらゴミをすぐ拾うくらいしか自由裁量権は無いですが、みんな進んで患者のために行動してくれます。相手を思いやって行動することが最高のサービスであり、いいスタッフに恵まれたことに感謝する毎日です。僕自身も治療技術を高め続け、心も豊かにあり続けることで最高のクリニックにしていきたいと思います。