牛乳②
『牛乳といえば?』と聞くとだいたい『カルシウム』という答えが返ってくると思います。
昔からTVのCMでも『牛乳を飲もう!』って言ってましたし、『小さい頃から牛乳をよく飲んでたから背が高くなった』なんてことも聞きます。
カルシウムは骨や歯を強くし、イライラを抑え、骨粗鬆症の予防になると言われています。全部ウソです。
骨粗鬆症の研究で有名なJ.A.Kanis教授はこう述べています。『骨成長が完了すれば、カルシウム摂取量の増加によって骨格が強くなることはないし、骨折を予防することもない』、『更年期後の女性にカルシウム摂取を奨めて骨折を減らそうという政策に意味はない』と。では、一体カルシウムは体の中でどのように使われているのでしょうか?
まず、ヒトの骨は常にリモデリングを行っています。そのため常時、骨からカルシウムが溶け出していて、代わりに新たなカルシウムが血液から吸収されています。つまり新陳代謝ですね。成長期は体を大きくする必要があるため、骨に入る量が出る量より多くなります。成人においては吸収量と出る量はほぼ同じにコントロールされるので骨密度に変化はでにくく、50歳を過ぎたあたりから出て行く量が吸収量を上回って骨が脆くなってきます。
ヒトはホメオスタシス(恒常性)により様々なものを一定に保つようプログラムされています。カルシウムも同じく血液中に8.8~10.4mg/dlとなるよう調節されています。もし過剰なカルシウムが摂取されると、腸からの吸収が抑制され、尿や糞便からの排泄が促進されます。カルシウム過剰摂取で問題なのは、マグネシウムや亜鉛・鉄などのミネラルも一緒に排泄されてしまうことです。結果、ミネラルの欠乏を招く恐れがあるのです。またビタミンD3もカルシウムの吸収に大きく関与します。もしカルシウムの摂取量が少なくてもビタミンD3の生成が増えて、カルシウムの吸収率を上げることにより効率的に利用できるようになります。
カルシウムを多く摂りすぎると起こる問題もあります。中でも有名なのはカルシウムパラドックスでしょう。カルシウムをたくさん摂取している国ほど骨が脆くなっているというものです。以下に示すのはハーバード大学のヘグステッド先生が1986年に出したデータです。乳製品を多く摂取する国ほど大腿骨の骨折を多く認めるとの報告です。
過剰にカルシウムを摂取すると、急激に上昇した血中カルシウム濃度を下げようと負のフィードバックが働き、今度は下限値を越えてしまいます。するとさらに骨からカルシウムを奪ってしまうのです。カルシウムが不足した状態では、骨から過剰にカルシウムが放出され過ぎてしまい、逆に血中カルシウム濃度が高い状態になるため、骨粗しょう症が起きるだけでなく、体内の他器官にも悪影響を及ぼしてしまいます。代表的なものは、結石(腎臓結石・胆嚢結石・膀胱結石・尿管結石)、動脈硬化、変形性関節症でしょう。
牛乳では骨粗鬆症の改善はできないということになります。最後に、アメリカの医学博士であるFrank A. Oski先生は著書でこう述べています。『戦後、アメリカが牛乳消費拡大のために日本に牛乳と小麦を大量に売り付け、その牛乳を捌くために「体に良い」と広めてきました(略)牛乳を大量に飲むほど体によいとイメージ作りをしてきてますが(略)このように、大量消費と多くの日本人に嗜好を植え付られてるいる事が、危険なのです。牛乳のプラスのイメージを伝える教育・宣伝はなされているが、牛乳のマイナス面も伝える事も大切なのです。』つまり、決して牛乳は完全栄養食品ではないということです。