腸の神秘
皆さんは腸は食べ物を消化する以外にもたくさんの働きをしていることをご存知でしょうか?すでに19世紀の中ごろには、腸内細菌と腸、脳は双方向に影響を及ぼしていることが認識されていたようです。
その影響とは、例えば感情やストレスは迷走神経と腸壁神経系の経路を介して消化管の蠕動運動や消化吸収、食欲などに影響を与えます。叱られたり失敗したりすると胃が痛くなったり、緊張するとお腹が痛くなったり下痢したり、ストレスが長期化すると食欲がなくなって体重が減るといった経験が皆さんもあるでしょう。また、腸の炎症ではこの経路が活性化され消化管からの信号が脳に送られます。ですから、腸と神経には密接な関係があるのです。
そもそもの生物の進化を紐解くと、最初に神経系ができたのは脳ではなく腸なのです。原始的なヒドラなどの腔腸動物には脳がなく、腸の中にニューロンがあるため、腸が脳の役割を果たしていました。そこから進化はスタートし、昆虫のような腹側神経系動物と、哺乳類のような背側神経系動物に分かれていきました。
背側神経動物の進化はまず、ウニやヒトデなどの棘皮動物に始まります。棘皮動物に介在神経系細胞と呼ばれる原始的な中枢制御機能が備わっています。さらにナメクジウオやホヤなどの尾索類に神経管が出現し、その後の脊椎動物へつながっていきました。
そして進化を重ね、ヒトの脳は即座に正確な判断をするために、1000億個もの脳細胞が複雑かつ精巧な仕組みで形成されるまでに至りました。しかし、発生から見ても分かるように、腸こそが神経系の基であり、腸には大脳に匹敵するほどの数の神経細胞があるのです。ですので腸はとても賢くできています。
腸の賢いところは、脳は食べ物が安全かどうかの判断はできませんが、腸は判断できます。食中毒を引き起こす細菌が混入していても、脳は「美味しそう!食べなさい!!」とシグナルを出します。しかし、腸は細菌が入ってくると、腸の神経細胞が即座に判断を下し、嘔吐や下痢などの激しい拒絶反応を示します。そして身体が中毒にならないように守ってくれています。
しかし、現代の食事には、砂糖やアミノ酸、様々な食品添加物が含まれており、それらはすべて脳が喜び、欲しがってしまう物質なのです。頭では体に悪いと知っていながらも、ポテチやジャンクフード、甘いものがやめられないヒト達もいますが、うまい具合に食品及び食品会社に脳を操作されていることに早く気づくべきでしょう。
ちなみに、これらの食品の依存性や食べた時の興奮は脳内物質であるセロトニンやドーパミンが影響します。しかし、これらの脳内物質も腸と密接な関係があります。それはまた次回にしますね。