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評論家の評論②

「誰も未来を予測することはできない。」

その裏付けとして、ペンシルベニア大学の心理学のフィリップ・テトロック教授の「Expert Political Judgment:How Good Is It?How Can We Know?(専門家による政治予想はそれだけ的中するか?)2005年」という本にまとめてあります。これは「専門家の予測」というものを20年にわたり研究したものです。

一般の視聴者や読者は、専門家や評論家が一般には手に入らない情報や人並みはずれた洞察力を持っていて、それを全力で未来の予測として視聴者や読者に提供しているという妄想を抱いています。しかし、そんな評論家や専門家は全く存在しません。

この本の結論として、未来を予測することについては、日頃から膨大な時間を専門分野の研究に費やし、それで生計を立てている評論家達もダーツを投げるサルも変わらないということでした。結局のところ未来を予測するなんて、どんなに勉強したところで確率論には劣ってしまいます。しかも余計な知識が邪魔をして現実とかけ離れた方向へ思考が行ってしまいがちとの結果も出ています。従って評論家が経済や国交関係などの展望を語るようなつまらないテレビ番組は見るに値しないですね♫

さらにテトロック教授は専門家を「ハリネズミと狐」になぞらえています。それは「狐は多くのことを知っているが、ハリネズミはでかいことを1つだけ知っている」という古い詩句から来るものです。

ハリネズミは1つの世界観をもっていて、どんな出来事も一貫したフレームワークでしか説明できない人を指しています。持論を決して曲げず、明確な意見を持っている点では、意志の強いとか芯がしっかりしてるなどと言われそうですが、間違った方向にも突き進んでしまい、途中での修正が効きにくい点も持ち合わせています。

一方、狐は複雑な考え方をします。物事を単純に見ず、いろんな方面から物事を考えることができます。その時代において、1つの事柄や思想が歴史を動かしているとは考えず、いろんな要因や力関係が複雑に絡み合って現実世界が決定されていると考えます。

テレビ番組を観察していると、よく見かける評論家はこぞってハリネズミ型であることがわかると思います。勢い良くまくし立てるほうが、エンターテインメントとして成立しやすいからでしょう。テトロックの実験ではハリネズミ型よりも狐型の評論家の方が優れた成績を収めました。しかし、好成績というわけではなく、ダーツを投げるサル程度です。

ここで言う未来予測とは長期予測のことであり、目の前の事がこうするとこうなる程度の予測は短期予測と言います。評論家の持ち味はこの短期予測であり、その知見には大いに価値があると考えられます。従って、長期予測と短期予測の境目がはっきりすればわかりやすいのですが、今のところ誰も答えを出せていません。

そう考えると、歯科治療も長期予測ってとても難しいということを思い知らされて来ましたし、短期予測は用意であることに気付かされます。「予防」は現段階では長期予測になりますので予測不可能ですが、いろんなデータも出てきているので短期予測になる日も近いのではないかと考えています。虫歯を作らないのが当たり前の世の中になるように、歯科における長期予測と短期予測のボーダーを手探りで進んでいきたいと思います。(おわり)

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