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インプラントの長期予後について①

新聞記事をはじめ、いろんなメディアでインプラントについての記事を目にすることが多くなりましたね。

最近では、デジタルデンティストリーにより、あまり経験のないドクターでもCTからガイドを作って寸分の狂いなくインプラントを入れられるようになりました。
そして、患者サイドの意識も高まっていることにより、オペ室などの環境改善も多くの歯科医院でなされるようになりましたね。

なので、昔のようにあさっての方向に埋まっているインプラントや、とんでもない被せものを見ることも少なくなりました。

しかし、インプラントは長期的に安定している人と、問題を起こす人の差はとても大きいのです。
問題が起こった場合は、インプラントを支えている骨や歯ぐきが炎症を起こして膿が出たり、噛んだときに痛みを感じたりすることもあります。
同じようにメインテナンスを行って入るにも関わらず、その差はどこから来るのでしょう?

それは、歯周病の進行にも言えることですが、免疫的な問題が大きく関与します。

例えば、口の中にいる細菌にほとんど差がなく、同じようにケアしているにも関わらず、Aさんは重度の歯周病、一方Bさんは全く健康だったりします。
その違いは、

①細菌に対する感受性が高い
②かみ合わせの癖や被せものの形態不良
③生活習慣からくる免疫の低下

が挙げられます。

多くは複合的な要因から発症しますが、これらのうちのどれか1つだけが原因であることもあります。

まず①です。
現在通常のクリニックで検査できるものとしては、歯周病原細菌検査があります。
当院では口腔内に存在する細菌のうち、5種類の歯周病原細菌の数と全ての菌に対する割合を調べます。
これにより、病原性の高い細菌が多く住み着いていると歯周病リスクも高くなると判断します。
もともと、歯周病で歯を抜いた人がインプラント周囲炎になるリスクが高いのはそのためです。
しかし、歯周病菌がどれだけいようが歯周病にならない人もいます。

それは特定の細菌に対して抗体を持つ人と持たない人がいるためです。
わかりやすく言うと、ある細菌から体を守る能力がない人もいるということです。

そのような人たちは、歯周病が重症化しやすく歯を失うリスクが高くなります。
そこにインプラントを入れてしまうと、当然インプラント周囲炎にもなるリスクが高くなります。
細菌検査では、歯周病リスクが最も高いと言われるP.G.菌に対する抗体があるかないかも調べることができます。

ですので、
①細菌に対する感受性が高い
に対処するためにはまず、細菌検査を行って歯周病リスクをしっかり見極めた上で、場合によってはフルマウスディスインフェクション(抗菌薬を使用した治療)やフォトダイナミックセラピー(レーザーでポケット内部を殺菌)などの抗菌療法を行い、歯周病リスクの高い細菌を排除しておく必要があります。(基本的なターゲットは3〜4種類の細菌)

これらの治療法は、菌交代現象(常在菌の割合が変化すること)を引き起こしたり、場合によっては耐性菌が発症するリスクもありますが、学術的にも実際の臨床においても非常に有効な手段です。

以上より、歯周病で歯を失ってインプラントで補う際には、きちんと歯周病のリスクを知り、事前に改善しておく必要があります。
歯が抜けたらインプラントで治せばいいやという考えであれば、歯科医も喜んでインプラントを勧めると思います。
しかし、インプラント周囲炎のリスクが残ったままかも知れません。

細菌検査は一般的なものではありませんが、とても重要な情報が得られます。
歯周病が進行している方にはぜひ検査して、リスクを知ってもらいたいと思います。

ついでにもう一つ口腔内から細菌を排除する方法があります。
それは、歯を全部抜歯してしまうことです。
予知性の高いインプラント治療をするためには、臨床では時々行われます。
入れ歯を回避して、見た目もよく、よく噛めるようにするには、こうするしかないこともあるのです。
しかし、歯を失いたくないのなら、まず現状を知ることはとても重要なのです。

②へ続く。

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